お産日記④「クライマックス」
さぁ、どうする私??
ずっと横向きで寝ていたところから起き上がり、咄嗟に大きなクッションに覆いかぶさるように四つ這いに変更した。
助産師さんが絶妙にクッションの高さを調節してくれる。(ここらへんのアジャストが完璧なのだ。)
クッションの向こうで娘が左手を、夫が右手を掴む。
体勢変更は1分も無い陣痛の合間に行った。
カラダの反応が一番早い。
この体勢だな?自分に確認する。よし、足腰はまだ踏ん張れる。
体勢変更に合わせて徳本さんが後ろで手早くシートの配置を変えてくれる。
そして一回目の陣痛。
ものすごい強い波で大きな声が出る。
これでもかといういきみをすべく、力強く叫ぶ。10秒くらい叫んだのかな。
「髪の毛見えてるよー。一回力を抜いて〜。ふぅ〜っと。」と徳本さん。
ふぅ〜っと全身の力を抜く。(もう髪の毛見えてるんだ!はやっ!!)
ののこが「髪の毛見えてるよー」の声でパッとと私の手を放し、お股の方へ移動した。
面白いその瞬発力!と思う。
空いた片手を夫が握る。
次の波に向けて完全に脱力。
驚くほどの静寂だ。
体の中では何も起きない。
外でも誰も何も音を立てない。
自分の体温と、鼓動と呼吸の音だけがある。
2回目の波が来る。叫ぶ。
…と、叫んでる途中に、あ!と気づいた。
私、前のめりすぎてる。陣痛のバイブレーション無視して、エゴイスティックにいきんでる!と気づく。瞬間それを捨てて、いきみを陣痛に乗せるほうにチェンジした。
前のめりじゃないいきみ。
陣痛というエネルギーに声をのせる。それだけ。
最小限で陣痛を活かしたいきみ。
陣痛に共鳴するいきみ。
余計な力みのないいきみ。
そしたらラクになった。
2回目のいきみで、こっちか!と気づく。
これが私にとって大きな気づきだった。
とにかく。
全身が緊張のピークを迎えた直後、にゅるんと何かが出た。
「頭出たよー。もう力を抜いていいよ。あと肩が出るからねー力まなくて大丈夫」
また完全なる脱力。
完全な静寂。
クッションに全身を預ける。
体の中は何もない。何も考えられない。
外でも誰も音を立てない。
あの一瞬の時間は本当に静かだった。
人が5人もいたのになんの音もしない。
次に来る瞬間を全員が待っていた。
静寂を破ったのは6人目の人だった。
お尻の方から小さな泣き声がする。
産声??まだ肩出てないのに…?
「あら、目が開いてるわ」と誰かの声。
3回目の波が来る。
力まなくて大丈夫と言われたのに、2回目で気づいたはずなのに、力むモードになった身体に力が入ってしまう。
「大丈夫。力抜いて。ふぅ〜」と言われて、そうだったと力を抜く方に持っていく。
陣痛に乗るだけに留める。
そうなの、抜いても体の中の収縮は起きているからそれだけで大丈夫。
ちゃんと必要な分のいきみは起きるから。
むさぼって、頑張って、努力していきみにいかなくて良いの。
そしてさっきより小さなにゅるん。全身が出た。
と、途端に大粒の涙が溢れ出た。
解放と安堵が涙になった。
「良かったぁ…」が私の第一声だった。
クッションに全身もたれかけ、
今度こそ好きなだけ脱力。
命が生まれた。
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